2026年2月20日の施政方針演説で、高市総理が、裁量労働制の見直しを検討する考えを示したと報じられました。
このニュースに対しては、賛否さまざまな意見が出ていますが、インターネット上では「長時間労働が助長されるのではないか」「定額で働かせ放題になるのでは」といった否定的な声が多いように感じます。
しかしながら、制度の前提や、現在の労働市場の実態を踏まえると、過度に悲観する必要はないのではないかと私は考えています。
裁量労働制の基礎をあらためて整理する
そもそも裁量労働制は、「残業代を払わなくてよい制度」ではありません。
業務の進め方や時間配分を、労働者本人の裁量に委ねる代わりに、一定時間働いたものとみなす制度です。
対象業務は法律で限定されており、導入には労使協定や本人同意など、厳格な要件が課されています。
本来は、高度な専門性を持つ人材が、成果ベースで力を発揮するための制度です。
「契約は自由意思」であるという大前提
裁量労働制を巡る議論で、しばしば抜け落ちがちなのがこの視点です。
労働契約は、労使が自由意思で締結するものです。
裁量労働制も例外ではなく、会社が一方的に押し付けることはできません。
もし、
・業務量が明らかに過大
・処遇に見合わない
・制度の趣旨と合っていない
こうした内容であれば、労働者は「契約しない」「同意しない」という選択ができます。
人材不足の時代、力関係は誰にあるか
現在、多くの業界で人材不足が深刻化しています。
企業は採用のために賃上げや柔軟な働き方を提示せざるを得ず、労使の力関係は、構造的に労働者側が強くなっているのが実情です。
この状況で、反対する人が懸念するような「裁量労働制=定額で際限なく働かせる」という運用が、どこまで現実的でしょうか。
そのような会社は、人材が定着せず、結局は市場から淘汰されていくでしょう。
経営者の立場から見た裁量労働制の本質
経営者にとって重要なのは、
「時間を管理すること」ではなく「成果をどう最大化するか」です。
裁量労働制は、
・優秀な人材に選ばれる働き方を提示できる
・成果志向の人材を惹きつけられる
・管理コストを減らし、本質的なマネジメントに集中できる
こうしたメリットを持つ制度です。
ただし、制度を導入すれば自動的にうまくいくわけではありません。
業務設計、処遇水準、説明責任を誤れば、むしろ信頼を失います。
労働者の方へ:嫌なら断るという選択を
労働者の方に伝えたいのは、嫌な契約には、同意しないということです。
裁量労働制は万能ではありませんし、すべての人に合う制度でもありません。
自分のキャリア、生活、価値観に合わないと感じたら、「断る」「交渉する」「別の選択をする」今はそれが出来る時代です。
おわりに:制度よりも、使う側の姿勢が問われる
裁量労働制の見直しは、「働かせ放題への回帰」ではなく、多様な働き方をどう設計するかという議論であるべきでしょう。
制度そのものを恐れるのではなく、
・どう使うのか
・誰のために使うのか
・市場からどう評価されるのか
これを冷静に考えることが、これからの経営には求められていると感じます。






