当事務所は開業以来労使トラブル畑を歩んできました。
あっせん代理業務では、北海道の特定社労士の中で一番の実績を挙げてきたと自負しています。
特定社労士とは、従来の社労士が「トラブルの未然防止」しか出来なかったのを、「紛争状態の労使の間に入れる」ようになった資格です。
社労士資格の歴史の中で画期的なことなのですが、残念ながらあっせん代理を積極的に行っている特定社労士は、北海道ではあまりいません。
当事務所は、平成22年に特定社労士を取得して以来、積極的にあっせん代理業務を行ってきました。それが顧問先様のためになると考えてきたからです。
あまり知られていませんが、労働トラブルの裁判では8割方が和解で決着します。
どのみち裁判になっても和解で決着するのなら、裁判の手前で和解を目指した方が、時間的にも費用的にも負担が少なくて良いに決まっています。あっせんにおいて仲裁に入る「あっせん員」と呼ばれる方々も、弁護士さんが入ることが多いので、裁判になった場合の見通しを立てた上で助言をしてくれます。
特定社労士としてはあっせんで解決出来るように腕を磨いておくべきですし、少なくとも顧問社労士としては、事が起きた時にいち早く助言をした上で「あっせんという選択肢」があることを顧問先に教えてあげる義務があると考えています。
労働トラブルの対応としては、
①まずは就業規則でしっかりとリスク対策をしておく
②何かあったら顧問社労士にすぐ相談
③あっせんで解決を図れるならあっせんで解決
①から③まで、すべて社労士が対応出来ます。
あっせんは実際のところ9割方が労働者からの申立てです。
しかしあっせんという制度は「労使の話合いによる解決」を目指す制度なので、ケンカの売り買いではないのです。どちらから申立てても良いのです。
当事務所が実際に関与したケースとして、こういう例があります。
従業員が2名の小規模企業でのトラブルです。
採用してみたが能力不足だった労働者に対し、職種の変更と、それに伴う給与の引き下げを提案したところ、職種の変更には同意してくれたが給与の引き下げには応じられないと言われた。話合いの最中に社長がつい感情的になると「それはパワハラです!」「私を解雇したいのですか?」と言われたりして話合いが進まなかった。小さな職場でお互いに毎日顔を合わせるのも苦痛になっていた。
職種のレベルを下げたのだから給与も下げるのは当然ではないか。仕事だけ簡単にしてくれ、でも給与は今まで通りという要求が通るはずがない。彼女と社内で2人きりになる時間はとても苦痛で、本音を言えば辞めて欲しいが、こちらから辞めさせたら補償金を要求されるんじゃないかと怖い。ただ彼女が本当に心を入れ替えて頑張ってくれるなら、雇い続けてもいい。
ちょっと働かせてダメだったから給与を下げるというのは従業員への教育義務を放棄しているだけだ。入社初日から一人でバリバリ働ける人なんていない。これはパワハラだし、辞めさせたいのではないか。給与規程もなく、社長の一存でこの仕事はいくら、この仕事はいくらと上げ下げされるのはおかしい。辞めたくないが、社長と性格が合わないので、日々顔を合わせるのは苦痛。
当事務所がアドバイスした上で、会社の方からあっせんを提案した。労働者の方も、あっせんなら良いですとのことで応じてきた。
このケースでは、結局労働条件を妥協して雇用を継続するよりもお互いに顔を合わせたくないという感情的な部分が大きかったことから、合意退職となりました。
社長があっせんという選択肢を知らなかったら、その後も話合いが進まず気持ちを擦り減らす日々が続いていたかもしれませんし、引き下げを強行したら裁判を起こされていたかもしれません。
あっせんは「話合いの延長」の場です。労使で何か揉め事が起きた時に、会社の方から申立てても良いのです。
これはあっせんを知り尽くした特定社労士だからこそ提案できるトラブル解決方法です。
Q 就業規則でしっかりリスク対策していれば労働トラブルは起きないのでは?
A 「民事のトラブル」は起こり得ます。
就業規則でリスク対策を取り、社会保険・労働保険手続を社労士に委託することで、「法律違反」を原因にした労働トラブルはほぼ無くなります。
しかし労働トラブルは必ずしも違法絡みに限らず、人間関係を原因にしたものもあります。
社員の指導・教育を熱心にやっていたら「言い方がきつい。パワハラだ!」と言われる。
とんでもない問題社員が入ってきてしまい、他の社員のことを考えて解雇したら訴えられる。
採用時にウソを言っていたことが発覚したので解雇したら訴えられる。
人間と人間である限り、大小問わずいろんなトラブルは起きるものです。
大事なことは火種の時点で顧問社労士に相談し、迅速かつ適切な対応を取ることです。