最近、「退職代行」に続いて休職代行というサービスが登場しているというニュースを目にしました。
会社に行きづらい、直接言いづらい――そんな事情から第三者を介して意思表示をする流れは理解できる一方で、休職については退職とは大きく性質が異なるため、注意が必要です。

今回は、労働者側・会社側それぞれの視点から整理してみます。

 

そもそも「休職」は法律上の制度ではない

まず大前提として、退職は法律上認められた権利ですが、休職は法律で定められた制度ではありません。

休職制度は、会社が就業規則で任意に定めるものです。

  • 制度を設けるかどうかも会社の自由
  • 内容(期間・要件・復職条件など)も会社が設計可能

つまり、「休職したい」と労働者が一方的に申し込めるものではないのです。

 

設けるかどうかも自由なのに、ほとんどの会社が設けているのは何故でしょうか?

労働者 → 本来労働という債務を提供できなくなったら労働契約を解除されてもおかしくないものが、休職制度があれば社員の籍を置いたまま一定期間療養に専念できる(その間に治れば戻れる)メリットがある。

会社 → 本来労働という債務が労働者から提供されなくなったら労働契約を解除する権利があるが、そうは言っても日本の司法ではなかなか解雇のハードルが高いということで、一定期間までに戻れなかったら「自然退職とします」(解雇ではない)という約束を就業規則という契約書に設けておくことで解雇の争いを防げる。

つまり労使ともにメリットがあるというのが、休職制度の意味になります。

 

「休職代行」は制度的に成り立つのか?

退職代行の場合は、労働者の「辞めます」という意思表示を代わりに伝えるというシンプルな構造です。

一方で休職はどうでしょうか。

多くの会社では、

  • 会社が必要と判断して休職を命じる
  • 一定の要件に該当した場合に休職に入る

といった設計になっています。

 「労働者からの申込みで休職する」という制度はどの会社の就業規則でもあまり見ません。

そのため、休職代行で「休職させてください」と伝えても、そのまま通るとは限らないのが実情です。

※なお休職でなく「欠勤します」という連絡の代行であれば、現実的にはあり得ます。休職は欠勤とは違います。欠勤はただのお休み。休職は「会社の制度」です。

 

労働者側の注意点

休職を検討している方は、以下を理解しておくことが重要です。

  • 休職は就業規則に基づく制度であること
  • 自分の意思だけで自由に取得できるものではないこと
  • 診断書の提出や会社の判断が必要である可能性があること

つまり退職の申込みと違って、ただの伝達でなく、会社との“交渉”が必要な可能性が高いものです。よって弁護士でない業者を使っての伝達は、法律違反となる可能性が高いことに注意が必要です。

 

会社側がやっておくべきこと

会社としては、特にメンタル不調のケースでは、対応を誤ると大きな労使トラブルに発展するため、とにかく“就業規則の整備”これが最重要です。

 

就業規則に定めるべきポイント

休職は「会社が命じる」ものとする

  • 会社が発令する形にしておく(判断の主導権を持つことが重要)

復職判断は会社主導にする

  • 主治医の診断書だけでなく会社指定医の診断を受けさせる規定を設ける

 ※メンタル不調では特に重要

休職期間満了時の取扱いを明確にする

  • 期間内に復職できない場合は自然退職とする(解雇ではなく)

休職中の報告義務

  • 定期的な経過報告を義務付ける

 ※休職中でも社員であることに変わりないので、過度にならない程度に現状を報告させることは出来ますし、重要です。

 ( 「連絡が取れない」状態は良くないです)。

休職要件を明確にする

  • 傷病の程度
  • 勤務不能の判断基準
  • 傷病以外の休職(設けるなら)

曖昧にしないことがトラブル防止につながります。

その他あると良い規定

  • 休職に入るときの診断書の提出義務
  • 無断欠勤との区別
  • 復職時の試し出勤(リハビリ勤務)
  • 休職期間の通算ルール(自然退職を防ぐため無理やり復職し、短期間でまた休職に入るような脱法行為を防ぐ)

 

まとめ

今回のポイントを一言で言うと

休職は「自由に取れる権利」ではなく、「会社が制度として用意するもの」

そして会社にとっては

休職制度はトラブルを防ぐための設計ツール

特にメンタル不調のケースは、「対応を間違えると長期化・紛争化しやすい」分野です。

だからこそ、いざという時に慌てないための就業規則整備が重要です。

もし、

  • 自社の就業規則がこのままで大丈夫か不安
  • 休職制度をこれから整備したい

といった場合は、具体的な条文レベルまでサポートできますので、お気軽にご相談ください。