今日のニュースで、退職代行会社「モームリ」の社長とその妻が弁護士法違反の疑いで逮捕されたという報道がありました。

この事件では、非弁業者が実質的に法律事務を行っていた疑いが持たれており、さらに警視庁は「紹介を受けた弁護士」についても調査しているとされています。

一見すると「退職代行業界特有の問題」に見えますが、実はこの構図、企業向けコンサルティングと社労士の関係でもある話です。

助成金コンサル+提携社労士という構図

近年、企業に対して次のような営業が行われるケースが増えています。

  • 「御社で使える助成金があります」

  • 「申請は当社と提携している社労士が行います」

  • 「社労士と直接契約して頂くので違法ではありません」

確かに、形式上は社労士と企業が直接契約していれば、一見問題はないようにも見えます。

しかし実態を見ると、

  • 制度説明や営業はコンサル会社が主導

  • 社労士は申請書類作成のみを担当

  • 報酬額の設定にコンサル会社が関与

  • 社労士が別名目(事務手数料など)でコンサル会社に金銭を支払っている

といったケースも少なくありません。

形式が整っていても、実態が伴っていなければ問題になるという点は、退職代行事件と共通しています。

企業が見落としがちな「社労士選びのリスク」

ここで企業側にぜひ認識していただきたいのが、「そうしたコンサル会社と提携している社労士と契約すること自体の危うさ」です。

本来、社労士は法律に基づき、独立した専門家として判断・助言を行う存在です。にもかかわらず、

  • 第三者(コンサル会社)の営業方針に強く影響されている

  • 報酬や業務内容を実質的に他社にコントロールされている

  • グレーなスキームに疑問を持たず関与している

こうした社労士は、遵法意識や専門家としての自律性に不安が残ると言わざるを得ません。

そのような社労士と契約した場合、企業は次のようなリスクを抱えることになります。

企業側に生じ得る具体的リスク

① 助成金の不支給・返還リスク

助成金は「申請できれば終わり」ではありません。後日の調査で、

  • 実態と異なる説明

  • 不十分な労務管理

  • 制度理解不足による不適切申請

が判明すれば、不支給や返還を求められる可能性があります。

② トラブル時に企業が矢面に立たされる

問題が起きた際、

  • コンサル会社は「社労士がやった」

  • 社労士は「コンサル会社主導だった」

という形で責任の押し付け合いになることもあります。

結果として、説明責任を負うのは企業自身です。

③ 助成金を使ったことで残る労務リスク

コンサル会社が好んで使う助成金に、キャリアアップ助成金や、健康診断制度導入の助成金、研修制度導入の助成金などがあります。

どの助成金も、使うことで生じる「リスク」がありますが、その説明を十分にされないケースが多いと感じます。

コンサル会社やその提携社労士にとっては1回きりのお付き合いなので、企業にどんなリスクが残ろうが関係ないのでしょうが、経営者はその制度が就業規則に残ってしまうことで企業が半永久的に負い続ける「リスク」についてしっかり把握しておかないと、後々大変なことになります。

例えば定期健康診断以外の健康診断を制度化した場合、助成金を1回もらい終わった後も、毎年その健康診断をやり続けなければなりません。研修も同じです。結局トータルでかかる費用はもらった助成金の金額を上回ることもあります。かといって途中で辞めてしまうと、助成金の不正受給になります。

どの助成金にも「メリットとリスク」があり、本当にその会社のことを思って説明してくれているか、ただの金づるとして企業を見ていないか、よく考えなければなりません。

「専門家に任せていた」という説明は、

“その専門家を選んだ責任”まで免除するものではありません。

経営者が気を付けること

助成金や労務管理は、「知らなかった」「専門家に任せていた」では済まされない分野です。

今回の退職代行事件が示すとおり、形式上は合法に見えても、実態が伴わなければ問題視される時代になっています。

「当社は提携社労士がいるから安心」「実績が多いコンサル会社だから大丈夫」

こうした営業文句を鵜呑みにする前に、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。

  • その提案は、誰が責任を持って説明していますか

  • 社労士本人が、御社の実情を把握したうえで助言していますか

  • 万が一トラブルになった場合、誰が前面に立って対応するのですか

もし答えが曖昧であれば、そのスキーム自体にリスクが潜んでいる可能性があります。

企業にとって本当に大切なのは、

「お得そうな話」ではなく、「自社のことを考えてくれる専門家」との関係です。

遵法意識を持ち、企業の立場で考え、説明責任を果たしてくれる専門家かどうか、そこを見極めることが、将来のトラブルを防ぐ最大のポイントと言えるでしょう。