お笑い芸人の闇営業問題で揺れている芸能界ですが、吉本興業が所属タレントと何らの契約書も交わしていないことが大きな批判に晒されています。

吉本興業に限らず芸能界の特徴なのでしょう。ここ数年でも、芸能事務所から辞めたいと申し出たタレントに対し事務所が多額の違約金を請求したり、今まで使用していた芸名を名乗らせないなどの妨害をしたことがニュースになり、その都度「タレントは雇用契約なのか?」が問題になってきました。

この手の問題が訴訟になる都度、裁判所からタレントの「労働者性」を判断する基準が示されていますが、そもそも裁判というのは「その事案」に対して判断しているだけなので、他の事務所と所属タレントの契約形態にそのまま適用できる訳ではありません(大いに参考にはなりますが)。

しかしこれだけ至る所で裁判になったりして揉めてきた訳ですから、吉本ほどの大企業が何の契約書も交わさずタレントを使うというのは「どうかしてるぜ」と思われても仕方ないですね。

思うに、吉本としては契約形態をはっきりさせるより、曖昧なままの方が使いやすいと思っているのではないでしょうか。

雇用契約は「仕事の受託を強制できる」「時間・場所を拘束できる」「活動内容に対し具体的な指示命令ができる」というメリットがあります。事務所からすればタレントをいいように使える訳です。請負契約(委託契約)だと、タレントも「事業主」となり、立場上吉本興業と同等になります。仕事の諾否を含めてタレントの自由度が増します。

一方で雇用契約には「社会保険に加入させなければならない(会社の金銭的負担が増える)」「労働基準法が適用されるので、労働時間が一定以上になると割増賃金が発生する」「会社が所得税を源泉徴収し、年末調整を行うなど事務負担が増える」などの、会社からすると負担も多いです。

吉本としては契約形態を曖昧なままにすることで、「強力な指揮命令権を持ったまま、会社の金銭負担も少なくする」という「いいとこどり」をしたいのではないでしょうか。

NON STYLEの石田さんが興味深いことを言っていたそうです。「我々は吉本の”お得意様”のようなもの」と。吉本の仕事発注先のようなものだという訳です。であれば、吉本がタレントを「解雇」や「謹慎」にする権利など当然無いですし、他でどんな仕事をやっていようが注意することも出来ません。

いずれにしてもこれだけ大きな問題が表面化した以上、これまでの曖昧な日本的慣習に基づくなあなあの関係ではなく、契約内容をはっきり書面で取り交わす方向に舵を切らなければならないでしょうね。