厚生労働省が先月、現在は1日または半日単位で取れる「子の看護休暇」と「介護休暇」を、原則1時間単位で取れるよう育児介護休業法の施行規則改正を進める方針であることがわかりました。

「子の看護休暇」と「介護休暇」について、どういうものかまずまとめてみます。

 

子の看護休暇・・・小学校に入る前の子供を持つ社員が、子供のケガや病気・通院などの理由で休むことを会社に請求できる権利。1日または半日単位で請求し、年間5日分まで。就業規則で無給とすることも出来る。

介護休暇・・・家族の介護のために1日または半日単位で請求できる休暇。直接的な介護に限らず、病院等への送迎、家事や買い物、諸手続なども対象になる。年間5日分まで。就業規則で無給とすることも出来る。

 

このように、現在は「1日または半日単位での取得」しか認められていません。

しかし実際には、子供の予防接種やケアマネジャーとの打合せなど、半日もかからず短時間で済む用事も多いです。

企業としても短時間で帰れるなら帰ってきてもらう方が良いという面があるので、労使共にメリットがあるということで、このたびの改正案検討に至ったようです。

(企業としては日数管理が複雑になるというデメリットはありますが…)

既に企業独自に、就業規則等で1時間単位での取得を認めているところもあり、厚労省の直近の調査では2割弱の事業所が1時間単位での取得を認めているとのことです。

 

ここで一つ、「年次有給休暇」との比較をしてみます。

年次有給休暇は、原則1日単位での取得。就業規則等で定めれば半日単位での取得も可。さらに「労使協定」を締結すれば1時間単位での取得も認められる(但し年間5日分まで)、という建付けになっています。

そうです。年次有給休暇を1時間単位で取らせるには、企業の一存で決めることは出来ず、労使協定の締結が必要になるのです。

 

年次有給休暇を1時間単位で取らせてあげるのは、労働者にとっても使いやすいので、企業の自由で決めても良いのではないかという意見もありますが、これは年次有給休暇というものの本来の「趣旨」から来ているのです。

年次有給休暇は本来、「1日まるごと労働から解放して心身ともに休んでもらおう」というのが趣旨になります。

時間単位での取得を無制限に認めると、1日休まれると困る企業側が、業務に影響の少ない時間帯で細かく取得していくことをそれとなく勧めて、有休休暇の残日数を減らしていくといった「悪用」も懸念されるため、「労使協定の締結」といった条件を課しているのです。

 

子の看護休暇と介護休暇は「子を看護するため」「家族を介護するため」というのが趣旨なので、現在でも企業独自に1時間単位で取得させることは可能。

年次有給休暇は「1日まるごと労働から解放するため」が本来の趣旨なので、1時間単位での取得は「労使協定の締結」という制限がある。

まとめるとこういうことになります。

 

請求する労働者からすれば、子の看護休暇や介護休暇を「無給」としている会社の場合、給料を減らされると困るなら年次有給休暇を選択する。

ただし1時間単位での年次有給休暇制度が会社に無いなら、給料を減らされてでも子の看護休暇または介護休暇を選ぶか。

こういった選択をすることになると思います。