ChatGPTに今年の大学入試共通テストを解かせたところ、9科目で満点が出たとのニュースがありました。
普段から業務でAIを使うことはありますが、特に昨年あたりから何か聞いたときの回答の精度が急激に上がり、怖いくらいです。「何だかんだAIは間違いが多いから」というのは過去の話で、ホワイトカラーの仕事がAIに食われる時代がいよいよ到来したと言って良いでしょう。
我々社労士とAIの違いは何でしょうか?今までなら社労士に聞いていた相談も、AIに出来るようになり、答えもすぐに出ます。私自身普段からよくAIを使う経験上、社労士が存在する意味を、具体例と共に考えてみました。
・正解の無い相談に「責任」を持って答えること
こんなご相談がありました。「求職者と面接し、内定の通知を出した。その後業務内容に関する質問メールが入った。それに答えると、追加でまた質問。答えると追加でまた質問。これが3週間程かけて何往復も繰り返され、いつ終わるかわからない状況。事務方の負担も大きく、本当に入社する気があるのがわからず求人を下げて良いのかもわからない。内定を取り消したいが問題の起きない伝え方を教えて欲しい」。
これをAIに聞くと、「相手を怒らせない伝え方が良い」とのことで、非常に抽象的で無難な伝え方を提案してくれました。
私としては、内定取消に対して無効の争いを起こされた時に備え、初動の段階から多少は「常識的に見てもやり取りが多過ぎです」ということをやんわり伝えた方が良いんじゃないかと考えました。
これは正直、どちらが正解というものではなく、終わってみないとわからないです。顧問先さんが聞きたいのは「先生だったらどうしたら良いと思いますか?」つまり何かあった時の責任と共に、考えて欲しいということです。AIは「責任」を取ってくれません。顧問社労士という法律家としての責任と共に寄り添ってあげることが、社労士が問われていることだと思います。
・法律上より実務上どうするかというアドバイス
こんなご相談がありました。「従業員が通勤途中で車対車の交通事故に遭った。ケガは大したことなく、病院に1回かかっただけで終わり。その治療費は労災を申請しなければならないのか、或いは相手方の保険から出るのか?」
これをAIに聞いてみたところ、「労災を申請してください。その後に、国の労災から相手方へ求償します。」との回答。しかし実務上は、相手方の保険を先に使って、全額賄われればそれで済みます。業務上の事故でないので労基への報告義務もありません。労災の書類「第三者行為災害届」を作るには膨大な負担が生じます。社労士や弁護士さんがネット空間に書いている記事は「正論」なので、AIはそれを拾ってきて正論を述べることには長けているが、「実務上はこれで良いんですよ」という回答は経験を積んできた社労士による言葉での回答の方が、その時の相談者の状況にフィットすると思います。
・相談者自身も気付いていないことに気付いてあげること。提案。
そもそも自分から質問しないとAIは答えてくれません(当たり前ですが)。自分でも気付かないことに気付いてあげ、聞かれてもないことを提案することが、我々人間の大きな武器だと思います。誰からも提案・指摘をされないと経営者として思考が狭くなってしまいますから、あえて「おせっかい」をしてあげることに意味があります。
まとめると、AIに無くて人間にあるものは「五感」だと思います。相手の言葉や仕草、表情から微妙なニュアンスを感じ取り、文章と文章の間の余白を汲み取り、聞かれてもいないことをこちらから伝える能力。「知識」ではもはやAIに勝てないが、「感じる力」では負けないと思っています。
※冒頭の大学入試共通テストでも、数学や化学などが満点なのに対し国語では満点を取れなかったそうです。
そして我々社労士も、感度を上げるためには普段から「自分で考える力」を付けておかなければならないと思いました。顧問先さんから相談されたとき、それをAIに聞く癖を付けてしまうと、AIと同じような回答しか出来ない社労士になってしまい、だったらAIでいいやとなるのは明らかだからです。社労士は「人」を扱う仕事なので、正解の無い相談や正解の割れる質問を受けることが多いです。そんな相談に対してどんな回答が出来るかは、その人の「人間力」、どんな人生経験を積んできて、どんな価値観が醸成されてきたか。お客さんが聞きたいのは「あなたならではの答え」なのだと思います。






