新型コロナウイルスの影響で会社から休むよう求められたのに休業手当が払われていない労働者を支援するため、政府が労働者に直接給付する制度を検討しているとの報道がありました。

今利用されている雇用調整助成金は制度の拡充を重ねてきていますが、「申請が難しい」「助成額に上限がある」「事後給付なので手元資金が無い会社は休業手当を払えない」といった問題があり、利用されてないケースも多いです。

直接給付する制度を新たに作るのは良いことだと思いますが、また難しくしてしまわないように、くれぐれも簡素でわかりやすい制度をお願いしたいです。

雇用調整助成金の様々な問題点のうち、もっとも大きいのは「複雑」ということです。新たな助成金を作れば良かったのに、昔からある助成金(しかも元々難しかった助成金)を無理矢理コロナ対策に当てはめようとしたのがそもそも間違いの始まりです。小出しに制度の改変を重ね、政府や厚労省は「簡素化した」と胸を張っていますが、改変を重ねすぎて逆に複雑になっています。改変が多すぎて、労働局の窓口担当者でさえ追い付いていなかったこともありました。

新たな給付制度を作るにあたり問題点があるとしたら、労働基準法26条で定める休業手当支払義務との兼ね合いでしょうか。国が労働者に直接休業手当を払ったとしても、労働基準法での支払義務は消えないと思うので、国からの給付を受け取った後に会社に対しても支払い請求を起こすことも可能になってしまいます。そうすると二重取りもあり得てしまいます。

ただでさえ「リスクを抱えながら頑張って働いてる人と、休んでる人が同じく給与を受け取っているのは不公平だ」なんて声もあるくらい国民からの不満が噴出している今の状況。休んでいる人が二重取りは避けなければなりません。どのような給付制度にするのか難しい設計が求められていると思います。