何やら「デモに参加すると就活に影響する」という噂が飛び交っています。バカバカしいですがまともに受け止めている人もおり見過ごせないので、一応触れたいと思います。
発端かどうかはわかりませんが、福岡県行橋市の市議会議員の小坪慎也氏という方がブログの中で、SEALDsを脅すような書き込みをしたことで、そのような噂が広まったようです。
影響があるのか無いのか? という論点で言うと、確かに「あるかもしれない」という答えになります。世の中にはいろんな経営者がいます。この小坪氏のような方や、ツイッターで「デモに参加する人は絶対採用しない」と言った堀江貴文氏のような人物が実際にいるのですから。
でも「心配することはない」というのが結論です。
まず、職業安定法第5条の4と、それに関する厚労省の告示において、思想・信条を始めとした募集業務に関係しない個人情報を企業が収集することは出来ないと定められています。企業が面接でデモ参加の有無を聞いたり、ネット等で調べてデモ参加の情報を得ることは、法律で禁じられているのです。
(小坪氏は、企業の採用の自由を認めた三菱樹脂事件の判例を執拗に推してますが、昭和48年の判例ですので、その後平成11年に出来たこちらの規定の方が現在の法律の考え方ということになります)
このことは採用活動を行う企業では常識であり、ある程度の規模の会社なら採用マニュアルに載せています。
しかしコッソリ法律を犯して情報を収集し、不採用とする企業もあるでしょう。
ネットで調べる分にはどうせバレないですし、何より不採用の理由をわざわざ本人に告げなくてもいい訳ですから、確かにわかりようがないです。
でも学生さんはよく考えてみてください。
コッソリ法律を犯して情報を収集するような、違法なことをする会社に入りたいですか?
そのような遵法意識の無い会社は、もし入ったとしても、長時間労働、サービス残業、パワハラ、雇用契約違反等々、様々な違法行為が待ち構えていますよ。「ブラック企業」と呼ばれる会社です。元々法律を守ろうと思っていない経営者なのですから。
不採用で良かったと、入る前に向こうから断ってくれて助かったと、感謝しなければいけません。
今や超売り手市場です。まともな会社は世の中にたくさんあります。「会社は学生を選ぶ権利がある」と言いますが、むしろ「学生が会社を選ぶ権利」の方が強い時代です。若者人口の減少によりこの傾向は今後ますます加速するでしょう。堂々と法違反をする会社は罰せられ、コッソリ法違反をする会社は見捨てられ、ブラック企業のレッテルを貼られれば淘汰していきます。
「デモ参加は就活に影響する」という話は、恐らく小坪氏のような安保法案賛成派が、全国で盛り上がりを見せるデモに恐れをなしてばら撒いているのでしょうが、冷静に考えて頂きたいです。反対派のデモだけでなく、賛成派のデモでも同じです。私だったら、デモに参加するような社会に関心を持ち、かつ行動力もある学生は、是非とも採用したいくらいですが…。そう考えている経営者はたくさんいますよ。
ちなみに「自分が経営者だったら採用したくない」と言っている人の理由として、「職場を荒らされたら面倒」というのがありますが、「荒らす」というのは具体的にどうすることなのでしょうか? 職場で政治活動をすること? それは就業規則できちんと禁止すればいいだけのことです。
学生の皆さん、もう一度言います。「デモ参加が就活に影響するかどうかと言われれば、ブラック企業ではあるかもしれない。でも心配いらない。世の中のほとんどのまともな会社に入れば良いだけ。」
札幌の社労士(社会保険労務士)のブログ