今日は、労働条件の変更に伴う労使トラブルを「あっせん」を使って解決した事例をご紹介します。

 

[概要]
 採用してみたが能力不足だった労働者に対し、職種の変更と、それに伴う給与の引き下げを提案したところ、職種の変更には同意してくれたが給与の引き下げには応じられないと言われた。話合いの最中に社長がつい感情的になると「それはパワハラです!」「私を解雇したいのですか?」と言われたりして話合いが進まなかった。小さな職場でお互いに毎日顔を合わせるのも苦痛になっていた。

 

[会社側の主張]
 職種のレベルを下げたのだから給与も下げるのは当然ではないか。仕事だけ簡単にしてくれ、でも給与は今まで通りという要求が通るはずがない。彼女と社内で2人きりになる時間はとても苦痛で、本音を言えば辞めて欲しいが、こちらから辞めさせたら補償金を要求されるんじゃないかと怖い。ただ彼女が本当に心を入れ替えて頑張ってくれるなら、雇い続けてもいい。

 

[労働者側の主張]
 ちょっと働かせてダメだったから給与を下げるというのは従業員への教育義務を放棄しているだけだ。入社初日から一人でバリバリ働ける人なんていない。これはパワハラだし、辞めさせたいのではないか。給与規程もなく、社長の一存でこの仕事はいくら、この仕事はいくらと上げ下げされるのはおかしい。辞めたくないが、社長と性格が合わないので、日々顔を合わせるのは苦痛。

 

[結果]
 社労士が同席しての話合いも労働者に提案したが、「社労士は社長の味方ですよね」と同意してもらえなかったので、労働ADR(あっせん)を提案したところ「それなら大丈夫です」と応じてもらえた。

 あっせん委員の方に間に入ってもらい話合いをしたところ、労働条件を妥協して雇用を継続するよりも、お互いに顔を合わせたくないという感情的な部分が大きいことがはっきりしたため、結局合意退職することとなった。

 

[コメント]

 労働条件は労使が話し合って決められればベストですが、話し合いが進まない場合、間に「公正中立かつ専門的な第三者」を入れることで「論点が整理」され、解決に向かって一気に進む場合があります。あっせんはそもそも「話し合いを促進させる」という趣旨の制度なので、このケースのように「話し合いの延長の場」としての利用に向いていると言えます。
 労使紛争というと労働者が訴え、会社が訴えられるという構図が一般的ですが、このように「話し合いの場」と考えれば、「会社からあっせんを申立てて労働トラブルを解決する」と考えてあっせんを利用することも可能です。
 「特定社会保険労務士」はこうした労働ADR(あっせん)の相談や代理業務をすることが出来る資格です。労働トラブルの相談は特定社会保険労務士にご相談ください。


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