残業代の未払いなどがあった場合の賃金請求権について、時効を今の「2年」から「5年」にする方向で検討されていることがわかりました。

2020年4月の民法改正に合わせて、労働基準法で定める賃金請求の時効も変えようということです。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190614-00000017-asahi-soci

 

未払い残業については、「うちはちゃんと残業代を払ってるから大丈夫」という会社でも、未払い残業代が出てくる可能性はあります。

悪意の未払い残業(サービス残業)はもっての外ですが、それ以外にも未払い残業代が生じる可能性があります。

 

1.勘違いによる未払い発生のケース

・変形労働時間制

1ヶ月の総枠時間(31日の月なら177時間、30日の月なら171時間)さえ超えなければいいと誤解しているケースが多いです。変形労働時間制は「総枠の範囲内で所定労働時間を組み立てられる」制度に過ぎないので、予定していた勤務時間を超えたら、結果的に総枠時間におさまったとしても残業代は発生します。

・固定残業手当

残業代を定額で支払う場合は、今は含有時間を明記しなければ残業手当として認められなくなっています。また、だいぶ少なくなってきましたが「営業社員には営業手当を払ってるから残業代など無い」という昭和のやり方も今は認められていません。

・管理監督者

「管理監督者だから残業は関係ない」というのも今は通用しません。「管理監督者の範囲」が問題になります。管理監督者の範囲というのは相当狭く、経営者と同一視できるほどの責任を有し、ふさわしい報酬をもらっているなどの条件を満たさないと認められなくなっています。

 

2.労働時間の「まるめ」

始業時刻が9:00の会社で、例えば8:48に出社してタイムカードに打刻した場合、時間をまるめて9:00からとみなして残業無しとしている会社は多いと思います。労働時間は原則1分単位で見るので、9:00前に仕事を始めていたとしたらその時間は残業となってしまいます。

ただ、出社が8:48だったとしても、仕事の開始は本当に9:00だとしたら、残業は発生しません。しかし会社としては、職務開始が9:00からである「証拠」を持っていないと、争いになったときには戦えなくなります。

これは始業時のケースですが、終業時もまったく同じです。

 

3.単純な計算ミス

給与ソフトを使わず、手計算(電卓やエクセルなど)で給与計算をしている零細企業などで起こり得るケースです。

 

このように、悪意が無くても、遡って5年請求される可能性が今後出てくるという訳です。5年というのは相当で、1人につき数百万単位で未払いが発生することもあります。

このような複雑な法解釈の問題を、特に小規模企業で把握しておくことはほぼ不可能だと思います。やはり社労士をつけて、きちっと労務面を見てもらった方が良いんじゃないかなと思います。