労働者の副業のあり方を議論する厚生労働省の検討会が、先月25日、副業分も加えた労働時間を企業が把握する際、「従業員による自己申告を前提とする」ことなどを提案する報告書をまとめました。
これに対し労働者側からは、自己申告では企業の労働時間把握が甘くなり長時間労働に繋がるとの指摘が出ているそうです。
政府は現在、労働者の副業を推進している立場です。
しかし副業をした結果、その日の労働時間が8時間を超えたら、超えた部分の割増賃金をどちらが負担するのかという問題があります。
現在は、その従業員にとって後から働いた勤務先が、割増賃金を負担するというルールになっています。よってその勤務先にとっては、従業員から「もう一つの会社で何時間働いたのか」教えてもらわないと、何時間分の割増賃金を払えば良いのかわからないのですね。
また、先に働いていた勤務先も、労働者の安全配慮義務という面では、全く無関心でいられる訳ではありません。もう一つの勤務先で長い時間働いているのに、自分の所でも長時間労働を命じたら、健康に配慮してないと言われかねないからです。
そういう意味では、副業先と本業(?)先、どちらもお互いに従業員の労働時間を把握しておかなければならないのですね。
そこで、よその会社の労働時間をどうやって把握するかという問題が議論されている訳ですが、
現実問題としては、従業員本人から申告してもらわないと、よその会社でその日何時間働いたかなんてわかりようがないと思います。
(企業同士が連絡を取り合って情報を横流しにする・・・というのも事務負担が増えて大変ですし)
それに、労働者の中にはあまり言いたくないという人もいると思います。企業が強制的によその会社の労働時間を調べるのはプライバシーの観点からも問題があります。
よって副業の労働時間問題に関しては、自己申告しか方法はあり得ないと私も思います。
この「労働時間問題」があるので、政府が推進するほど企業に副業容認が広がっていない現状があります。
他には「社会保険問題」もあります。自社の従業員が副業していると、社会保険の二以上事業勤務扱いにしなければならず、毎月の給与計算のたびに特別な扱いをすることになり、中小企業にとっては事務負担が大きいという問題です。
そもそも政府が副業を推進しているのは何故か?
表向きは、単線型のキャリアパスでなく、様々な仕事を経験することで自分のやりたいことを見つけたり第二の人生の準備になったり…という「本人のためになる」ということなのですが、本当の理由は「国はあなたの老後を支えられないので、自助努力で収入を増やしてくれ」だと言われています。
先般の「老後資金2000万円問題」もそうですが、とにかく「公助」をあきらめ、それぞれ自分で頑張ってくれというのが今の政府の本音なのでしょう。
歴代政府の失政を国民に押し付けてくるのはたまらないのですが、今我々が出来ることは、正確な情報をしっかり得て背景を知り、今自分に何が出来るのかを考えることだと思います。