本日、参議院本会議にて、健康保険証の廃止とマイナンバーカードの一本化を目的とした改正マイナンバー法案が成立してしまいました。この法案には国民の間で強い懸念と批判の声が多く、強行採決といって過言ではありません。今回の改正法案が実質的なマイナンバーカードの強制化と、他人の情報へのアクセスを含む信頼性の問題を抱えていることについて、考えてみます。 

まず、改正法案により健康保険証が廃止されマイナンバーカードに一本化されることで、国民は事実上、マイナンバーカードの所持を強制される状況となります。建前上、マイナンバーカードは任意であり持ってない人には「資格証明書」などというものを発行すると言っていますが、資格証明書には有効期限が設けられるので、実質的にマイナンバーカードの取得が強制されたと言って良いでしょう。これは「マイナンバーカードの取得は任意」と定められている現行法に違反し、現行法と改正法に矛盾が生じる状況になります。

さらに、マイナンバーカードには役所担当者の手入力の誤りにより他人の情報が紐づけられているという問題が頻発しています。マイナンバーシステムは本来、健康保険や年金の情報、税金関連のデータのみの利用に限られていましたが、今後は個人の健康状態、病歴、投薬歴、また口座情報も紐づけられることになります。このような状況下で、他人に自分の機微な情報がアクセスされるリスクが存在することは、国民の不信感を招く大きな要因となることは間違いありません。 

改正マイナンバー法成立の前に、国民の不信感を払拭することが先です。国民が不信感を感じている理由としては、大きく2つあるのではないでしょうか。1つは、健康や財産といった特に機微な情報が国に管理される怖さです。もう1つは、それら機微な情報が他人に漏洩する恐ろしさです。これらの不信感に対する説明が、現状まったく十分になされておらず、ただ利便性だけを謳っても納得を得られるはずがありません。

改正マイナンバー法案の成立は、個人情報管理や国民の信頼確保にとって重要な節目です。国民の不信感を払拭し、情報管理の安全性と利便性を両立させるために、政府は丁寧かつ適切な対応を行う必要があります。