労務関係の話題でこれだけ大きな報道が出たのは久しぶりでしょう。昨日、大阪医科薬科大事件とメトロコマース事件の最高裁判決が出ました。
前者は「賞与」、後者は「退職金」について、非正規労働者が正規労働者との間に著しい格差があると訴えた裁判でした。
結果、いずれも高裁の判断を覆し、賞与や退職金が非正規労働者に無いことは不合理でないと判断されたことで、大きなニュースとなりました。
判決文はこちらで公開されています。
大阪医科薬科大事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/767/089767_hanrei.pdf
メトロコマース事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/768/089768_hanrei.pdf
判決文をよく読めばわかるのですが、当然ながら労働契約法20条(現在はパートタイム・有期雇用労働法へ移行)に沿ってしっかりと判断されています。
「基本給、賞与、その他の待遇それぞれについて」「その性質・目的に照らし」「正規と非正規の間での職務の内容・職務の内容と配置の変更の範囲・その他の事情を考慮して」不合理な差を設けてはいけないというものです。
考慮すべき3つの事情を、高裁は「それほど大きな違いはない」、最高裁は「違いが大きい」と判断したということでしょう。
企業としたらどうすればいいんだということですが、どうしても線引きに曖昧な部分が残るのは仕方ない問題だと思います。
気を付けなければならないのは、ニュースの見出しだけ見て「非正規には賞与と退職金を出さなくていいんだ」と決めてしまうことです。パートタイム・有期雇用労働法では、非正規労働者から待遇の差について説明を求められたら、根拠資料を明示して説明しなければならないとしています。その説明に納得出来なかったら、ADR、裁判を起こされ、不合理だと判断される可能性はあります。
この2つの判決は「この事件に関して」この判決になっただけの話です。裁判は個別判断ですので、今後、似たようなケースでまた違う結論になることも出てくるでしょう。
「手当」は比較的、性質と目的がわかりやすいですが、賞与や退職金、基本給などは曖昧なものです。その目的を明確にすること、目的に沿った支給の仕方をしていること。そしてそれを労働者に納得いくように説明して理解してもらうことが何より大切となります。