「セルフ・キャリアドック」って聞いたことありますか?
これは、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施することを通じて、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組みのことです(厚生労働省HPより)。
平たく言うと、従業員自身が「自分は将来こうなりたい」という目標を持つ。会社も経営理念や将来のビジョンを持つ。
会社→「当社が将来こうなるためには、こんな人材が欲しい」 従業員→「自分が将来こうなるためには、今はこんな仕事をしたい」 両社のニーズが一致すれば、従業員の仕事に対するモチベーションも上がり、定着率の向上、生産性向上にも寄与するだろうというものです。
現在、国が企業に対して積極的に勧めており、予算を割いて普及拡大事業を行っているようです。
従業員が目標を持つお手伝いを会社がする仕組みを作るのがセルフ・キャリアドック制度とはいえ、会社からの押し付けでは効果が上がりません。従業員が主体的に、自分の考えでまとめられるような「後方支援」をすると考えた方が効果は上がると思います。
実際には、明確な将来の夢・目標というのが見つかってない人も多いと思います。経営者からは「最近の社員は主体性がない」「自分からこうしたい、ああしたいが無い」「将来どうなりたいのかが出てこない」「何を考えてるかわからん」という声をよく聞きます。
「将来の夢・目標を持ちたいが、見つかっていない」人と、「そもそも持たなくてもいいや」という人もいるかもしれません。後者は企業で雇用するのは厳しい人材だと思いますが(どうやったってモチベーションは出てこない)、前者ならなんとかやりようがあるかもしれません。
先日、著名なキャリアコンサルタントの先生の講演を聴いたときに、将来の目標が従業員から出て来なくても「とりあえず持ってもらう」と言っていたことが印象に残っています。
心からワクワクするような目標が見つかってるなら良いのですが、そうでない人の方が多いと思います。だからといって「見つかってないなら行動する意味がない」として漫然と生きていたら、たった一度の人生を無駄に過ごすことになってしまうし、「行動することで初めて見つかるもの」もあると思います。行動しないより、とりあえず現時点で「自分の強みを活かせる仕事」や「会社に期待されている役割」の延長線上に目標を定めて行動する。それを会社が促してあげるのが、本人にとっても会社にとっても良いことだろうと思います。
なおセルフ・キャリアドック制度は「キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて・・・」と厚生労働省のHPに書かれていますが、中小企業は最初から大掛かりな仕組みを入れようとは思わず、まず一対一の「キャリア面談」から実施していくのが良いと思います。キャリア面談は、上司の方がやっても勿論いいのですが、本人の目標を引き出すのに多少スキルがいるため、通常は「キャリアコンサルタント」を活用することをお勧めします。