先日「給与前払いサービス」が流行り始めているとのニュースがやっていました。

給与前払いサービスとは、月1回の給与支払い日から繰り上げて、働いた分の給与を先払いでもらうことができるサービスです。

給料日前でも従業員の申請に応じて、そこまで働いた分の給与の中から一定の割合の金額を先に支払ってもらえる仕組みです。

人手不足の中、このサービスをすることで応募者増を目指している会社が増えてきているとのことでした。

 

このサービスを提供するのは、自社で対応するのはほぼ不可能なので、専門の業者に依頼するしかありません。

調べるとサービスを提供している業者は結構あり、一体どの業者が良いのか迷うところから始まるかもしれません。

 

比較的新しいサービスなのでまだ問題点が表面化していないようですが、労働法の観点から見ると、心配な点もいくつか思い浮びます。

まず「手数料は誰が負担するのか」。

業者もボランティアではないので、このサービスを利用する者から手数料を得る必要があります。

これを会社が負担するなら、それ程問題は起きないと思います。

しかし会社の負担が発生するなら別にいいやと思う会社もあるでしょう。

従業員に負担してもらうのが会社としては最も導入しやすいですが(そもそも前払いして欲しいと思うのは従業員なので)、そうすると労働基準法で定める「給与の全額払いの原則」に違反する可能性が高くなります。

この場合、摘発されるのは業者ではなく、全額払いを行わなかった会社になりますので、サービス導入を検討している会社さんは、その辺りがクリアになっている業者をよく見極めて選ぶ必要があります。

 

また、前払い給与を「誰が」従業員に払うのかも確認しておきたいところです。

同じく労働基準法には「給与の直接払いの原則」というのがあり、原則会社が直接従業員に支払う必要があるからです。

業者を通じて従業員に支払われるシステムなら、法違反となる可能性があるため、業者選びにはここもチェックポイントです。

 

あと心配なのは、「社会保険料の控除をどのタイミングで行うか」です。

雇用保険料は単純に「その月の支払総額×保険料率」なので、日払いであっても控除額はほとんど変わりませんが、社会保険料は等級表に基づく定額制なので、従業員が好きなタイミングで引き出すとしたら(最悪、毎日引き出すこともある)、どのように控除するのでしょうか。

「その月の社会保険料額に達するまでは引き出せない」とするのが現実的な方法だと思いますが、従業員からすると前払いのメリットがあまり感じられないかもしれません。

 

いずれにしても「手数料を払ってでもこのサービスを利用したい」と思うのは、当面は大企業に限られると思いますが、利用企業が増えてくれば中小企業も手を出さざるを得なくなるかもしれません。それまでにこのサービスの問題点がクリアにされ、中小企業も無理なく利用出来るようになっていれば良いと思います。