なかなか成長しない部下には、部下の「現在位置」に応じた指導の仕方があります。

 実際に現場でOJTを実施する場合、対象者が「今、どのレベルにいるのか」を見極めることが重要です。出来ないのか、出来るのか。それに合わせて教え方を変えていきます。

 

行動分析学から考える指導の技術

 この学問は、もともと小学校の先生が学ぶ学問です。出来ない生徒(子供)をどうやって早く出来るようにするか。ですから新卒が入社してくる部署の上司が従業員指導に生かせる学問といって良いでしょう。

 

 まずヒトが行動できない理由を考えてみましょう。下図のように3つのステップに分かれるはずです。

 

①そもそもやり方が分からない、だからできない

↓A

②やり方は分かっている、やるべき行動は明確になっている(でも分かっちゃいるけど継続できない)

↓B

③常にできる

 

 これを「行動の3ステップ」と言います。

 

 ①と②の間には「Aの壁」が、②と③の間には「Bの壁」がありますが、この壁をどうやって破るかがポイントです。

 

 

行動の細分化

まず「Aの壁」の破り方は

 →「行動の細分化」です。

ヒトは具体的にイメージできないことは実行できないからです。

 

 例えば、来社のお客様に対して、よりおもてなしの心を持って対応して欲しい場合は、「おもてなしの心を持って対応しましょう」というのではなく、「〇〇様と名前で呼びかけましょう」と指導するのがそれです。

 

×「おもてなしの心を持って対応しましょう」

〇「○○様、と名前で呼びかけましょう」

〇「目を見て少し微笑んで『お待ちしておりました』とはっきり言いましょう」

このように行動を細分化して指示してあげることで、部下はどうふるまえば正解なのか具体的にイメージすることが出来ます。

 

 

行動の習慣化

次に「Bの壁」の破り方は

 →「習慣にする/させる」です。

ヒトはすぐに褒められたり、認められないと継続できないからです。

 

 教えたとおりに出来たときは「60秒以内」に褒めてあげます。これを「60秒ルール」といいます。

 反対に言ったとおりにやらなかったときも「60秒以内」に叱ります。

 行動に対してすぐに報酬を与えるというのがポイントです。報酬とは、「褒める「叱る」「認める」こと。

 翌日の朝礼で褒めてあげても効果は半減します。その場で上司の反応を示して条件反射のように正解の行動を体に刷り込ませていきます。体に刷り込ませていくことが習慣化の第一歩です。