総合物流業の沖縄県内企業に勤務する男性従業員(42)が自殺を図ったのは長時間労働が原因だったとして、妻との携帯メール459通を証拠に、労働基準監督署が労災認定したことが分かりました。ニュースによると、自殺未遂をした2014年3月29日の直前1カ月間の残業は162・5時間で、過労死の目安とされる月80時間を大幅に超えていたとのことです。

 本件では、タイムカードなど客観的に労働時間を記録するものがなく、毎日の出退勤時に妻へ送っていた携帯メールの履歴が勤務実態を把握できる唯一の証拠として、労災認定がなされました。

 

 タイムカードなどの証拠が無くても、家族への「今から帰ります」メールやツイッターなどへのつぶやきが民事訴訟での証拠になり得ることは以前から言われていましたが、労基署の労災認定においても使われましたね。

 もっともメールがあれば絶対大丈夫という訳ではありません。客観的な証拠があるに越したことはないです。タイムカードが無いなら、帰宅前に社内の「時計」を写メでパチリ、など工夫によって客観性な証拠は作れます。

 ニュースだけでは詳しいことはわかりませんが、459通という膨大な数のメールが信ぴょう性を高めたことや、他の社員への聞き取りから実際に残業があったことを推測出来たのかもしれません。客観性の薄い証拠を何でも採用するのでは、「作る」ことも出来てしまいますから。

 企業の労務管理面から言うと、たまにタイムカードをわざと無くすことで時間の記録を残さないようにしている会社がありますが、逆効果だと思います。労使の言い分が食い違った場合に、この事件のように労働者側のみに証拠が存在して会社側に無いと、全面的に労働者の主張が採用される可能性がある訳ですから。まずは実際に残業を適正な時間内に抑えること。そしてそれをタイムカード等の客観的な記録で残すこと。これが会社を「守る」ことに繋がるのです。

 

 

札幌の社労士(社会保険労務士)のブログ

 


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