政府は25日、働いて一定以上の収入がある高齢者の年金を減らす「在職老齢年金」制度に関し、現行の「47万円」から「51万円」へ引き上げる予定でいたのを凍結し、「47万円」のままで行く方針であることがわかりました。

在職老齢年金は、年齢により大きく2つの基準があります。

 

①60歳代前半→(賃金+年金が)月28万円を超えると年金減額

②65歳以上→(賃金+年金が)月47万円を超えると年金減額

 

今回は、②の基準引上げに着手しようとしていたのを、凍結したということです。

 

理由としては、賃金と年金を合わせて月47万円以上もある人はそこそこゆとりがある人なので、それを引き上げたところで「じゃあもうちょっと働こうか」という就業意欲に繋がるかどうかが疑問だということです。(それは確かに、と思います)。

就業意欲に影響を与えないならただ年金の支出が増えるだけ、しかもゆとりのある高所得者だけに恩恵を与えるんじゃないかとの批判も多くありました。

ちなみに厚生年金保険の加入は70歳までなので、70歳以上の人は年金保険料の負担もありません。まさに「年金保険料収入も増えず、ただ出ていくだけ」の可能性が高まったということでしょう。

※なお①60歳代前半の在職老齢年金基準は、65歳以上の基準「47万円」に合わせて引き上げる方向で調整されています。28万はちょっと少ないので、そこは就業意欲の高まりに繋がるかもしれません。

 

「老後の高所得者に恩恵を与えるのはなるべく辞めよう」という考えは他にもあります。

そもそも社会保険料を決定する時に使う「標準報酬月額表」。会社で事務をやっている人はわかると思いますが、健康保険と厚生年金保険で上限が異なります。

健康保険は現在、月額報酬1390万が上限であるのに対し、厚生年金保険は62万円です。それ以上に給与をもらっている人であっても、62万とみなして保険料を算出しているのです。

もっと引き上げれば国としても年金保険料収入が増えるのに…とも思いますが、年金保険料を多く払う人は老後もより多くの年金をもらえる。「お年寄りにあまりに極端な格差をつけたくない」という意図でこのような調整がされているのです。

公的年金は民間の年金保険と違い、国民の「福祉」という側面から来ている考えなのでしょう。