厚生労働省が、毎年6月に「個別労働紛争解決制度の施行状況」を発表しているのですが、今年も6月26日に発表され、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数がまた過去最高を更新したことがわかりました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000213219_00001.html
全国の労働局に寄せられる相談件数全体は、年100万前後でここ10年程推移しており、増えても減ってもいない状況です。
しかしその中での相談内容は大きく変わり、かつてトップだった「解雇」は激減し、平成25年にはじめてトップを取った「いじめ・嫌がらせ」がその後も独走を続け、年々2位以下との差を広げている状況です。(このデータは「民事」に関する相談のみで「残業代不払い」のような法違反案件は入っていません)
もう一つ、ここ数年で伸ばしているのが、「自己都合退職」に関する相談です。今やいじめ・嫌がらせに次いで2位です。「辞めたいのに会社が辞めさせてくれない」というのが典型的な内容でしょう。
人手不足の時代背景を如実に表していると思います。
なお「あっせん」の申請件数は前年より少し増え、内容別ではやはり「いじめ・嫌がらせ」に関する申請がトップです。
「自己都合退職」については、「相談」は年々増えているが「あっせん申請」についてはそれほど増えていないこともわかります。これは、「辞めさせてくれない」という問題はそれほど解決が難しくなく、あっせんに頼るまでもないということを表しています。無理やり退職届を渡してくれば済むんだということに、相談の結果気付いた人が多いのでしょう。
「辞めたいのに辞めさせてくれない」という人の救済で「退職代行サービス業者」が流行っているという話題が昨年来出ていますが、そのような業者を利用するまでもなく、会社を辞めるというのは簡単です。会社が労働者を切るのは難しいのですが、労働者が会社を切るのは難しくないのです。今は入社にしても退社にしても、労働者優位の時代だと言えるかもしれません。