労働紛争解決

労働トラブル解決の概要

労働組合ではなく、個々の労働者と会社との労働トラブルを「個別労働紛争」と呼びます。個別労働紛争の解決手続としては、究極的には裁判(訴訟)ということになりますが、裁判は時間も費用もかかるので、早期の解決が求められる労働紛争には不向きです。そこで近年、裁判を使わなくても労働トラブルを解決できる、様々な制度が充実してきました。

個別労働紛争の解決を図る機関は、大きく3つに分けられます。 労働基準監督署、裁判所、そして裁判所以外の紛争解決機関です。

 

個別労働紛争の解決機関

 

労働基準監督署

労働基準監督署だけは、他の紛争解決手続とは性格を異にします。 労働に関して困ったことが起きたら、とりあえず労基署へ相談しようと思っている方も多いのですが、労基署は労働基準法などの法令違反が起きていないかの監督と取り締まりを行う機関です。

 

よって民事の紛争には介入できません。 警察が「民事不介入」と言ってるのと同じ趣旨です(労働基準監督官は、司法警察職員と呼ばれ、労働の分野に関して、逮捕や送検など警察官と同じ権限を持っています)。労働者からの申告または定期監督によって、賃金不払いなど、罰則を伴う労働法違反を発見したら、まず会社に対して是正勧告を行う。それでも是正されないと、検察に送致(送検)→刑事裁判を提訴→罰則が適用という流れになります。(是正勧告を行うことで、結果的に紛争が解決することが多いです)

 

例えば労働者が残業代未払いだと思っていても、企業が未払いは無いと思っている場合(争いがある場合)や、解雇の有効・無効を争う場合などは、民事紛争とされ、労基署の管轄外になります。民事紛争は、下記の「裁判外の労働紛争解決機関」または「裁判所での労働紛争解決手続き」を利用して解決していくことになります。

 

 

裁判所以外の労働紛争解決機関(ADR)

ADRとは裁判外紛争解決機関(Alternative Dispute Resolution)のことです。裁判所の手続は、法律で定められた厳格な手続で行われるので時間がかかります。このため裁判より柔軟・簡易・迅速に解決できる制度として期待されています。ADRは交通事故やスポーツなどの分野でも既に種々の機関が設立されています。裁判のように勝訴・敗訴を確定させるのではなく、両当事者の話し合いによる解決を目指しています。

 

1.労働局

 労働局とは、各都道府県に置かれている厚生労働省の地方支分部局(地方機関)です。つまり国の機関です。 北海道労働局には「総合労働相談コーナー」が設けられており「相談・情報提供」が行われています。 相談の内容に応じ、労働局長の名で「助言・指導」または紛争調整委員会による「あっせん」に引き継がれます。 「あっせん」は第三者(紛争調整委員)が労使の間に立って話し合いを促進させ、紛争の円満な解決を図ります。 裁判のように白黒つけるというよりは、和解による解決を目指す制度です。 行政が提供する和解サービスとでもいうべきでしょうか。はじめから全く妥協しないと決めている場合は向かないかもしれません。

2.労働委員会

 労働委員会とは、労働組合法に基づき設置されている独立行政委員会で、都道府県ごとに置かれる都道府県労働委員会と、国に設置される中央労働委員会があります。 従来、労働組合と会社との紛争を解決してきましたが、平成13年に個別労働紛争解決促進法が成立したことにより、あっせんなどにより個別労働紛争を取り扱うことが出来るようになりました。 北海道労働委員会でも、今では、労働局と同じように個々の労働者と会社との紛争を解決すべく、あっせんが数多く利用されています。

3.社会保険労務士会

 法務大臣の認証と厚生労働大臣の指定を受けて、社会保険労務士会でもADRが利用できるようになりました。 平成22年4月より、北海道社会保険労務士会も「社労士会労働紛争解決センター北海道」を開設しました。 特定社会保険労務士が、トラブルの当事者の言い分を聴き、個別労働関係紛争を「あっせん」という手続により、簡易、迅速に解決しています。 雇用保険や社会保険に強い、社労士ならではのあっせんが期待出来ます。

4.弁護士会

 多くの弁護士会でも、ADRとして「紛争解決センター」を設置しています。札幌弁護士会でも設置しております。 弁護士があっせん人・仲裁人となり、当事者の話し合いによる解決の促進、仲裁人による仲裁などを行います。 弁護士会の紛争解決センターは、売買トラブルや近隣住民とのトラブルなど、紛争性のあるあらゆる事件を扱っており、労働トラブルもその一つだということです。 弁護士会によっては、法務大臣の認証を受けていないために「時効の中断」という特典が無いところもありますので、ご注意ください。

 

 

裁判所での労働紛争解決手続

1.調停

 裁判所でも、いわゆる訴訟だけでなく、話し合いによる解決を目指すサービスが提供されています。 「民事調停」とも呼ばれるこの制度は、民事紛争につき、「調停委員会」が当事者の合意に基づく紛争解決を図ります。裁判所での手続の中で最も簡易な手段であり、簡易裁判所でも実施されています。 舞台は裁判所ですが、いわゆる「裁判」を使わないという意味で、ADRに含まれるとも言えます。

2.労働審判

 平成18年から施行された「労働審判法」により創設された制度です。 原則3回以内の期日で、労働審判委員により、まず当事者の合意による調停を目指す。合意に至らなければ審判委員が審判を示し、審判に異議があれば訴訟に移行します。 調停と訴訟の中間に位置する制度だと考えれば良いでしょう。

3.支払督促

 金銭などの給付に係る請求について、債権者の申立てにより、その主張から請求に理由があると認められる場合に、裁判所が支払督促を発する手続です。未払い賃金などの請求に利用できます。 債務者が2週間以内に異議の申立てをしなければ、裁判所は、債権者の申立てにより,支払督促に仮執行宣言を付さなければならず、債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができます。

4.保全処分

 訴訟による権利の実現を保全するために、簡易な審理によって、裁判所が仮の措置をとる手続です。 権利を保全する必要があること、言い換えれば、訴訟の結果を待っていたのでは遅くなってしまう高度の緊急性があることが、保全処分を利用する前提です。 例えば、解雇された従業員が、解雇無効として会社に訴訟を提起する前に、従業員たる地位を仮に定める(地位保全仮処分)とともに、賃金の仮払いを命じる仮処分(賃金仮払仮処分)を申し立てます。

5.小額訴訟

 民事訴訟のうち、60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争解決を図る手続です。 即時解決を目指すため、証拠書類や証人は、審理の日にその場ですぐに調べることができるものに限られます。 法廷では、裁判官と共に丸いテーブルに着席する形式で、審理が進められます。

6.訴訟

 原則として、請求金額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所が第一審となります。 公開の法廷で厳格な手続が進行していくので、ある程度の時間と費用はかかります。もっとも訴訟の中で、判決でなく和解で終結することも3割くらいはあると言われています。 事実関係に関して当事者間で言い分が決定的に異なる事案や、時間と費用をかけてでも徹底的に争いたい事案に適した手続と言えます。

 

 

個別労働紛争解決制度まとめ

機 関手 続特 徴公開 ・ 非公開費用特定社会保険労務士の代理の可否
労働基準監督署申告労働関係法違反のみ取り扱う 無料 
裁 判 外 紛 争 解 決 機 関A D R労働局助言 指導問題点を指摘し紛争の自主解決を促す 無料 
あっせんあっせん委員が当事者の間に入って和解を促進する非公開無料特定社労士の代理可
労働委員会あっせんあっせん委員が当事者の間に入って和解を促進する非公開無料特定社労士の代理可
社会保険労務士会あっせんあっせん委員(社労士)が当事者の間に入って和解を促進する非公開有料

特定社労士の代理可(請求額120万円以下のみ)

弁護士会あっせん 仲裁弁護士があっせん・仲裁を行う非公開有料弁護士会の許可が必要
裁判所調停裁判所の手続の中では最も簡易非公開有料裁判所の許可が必要
労働審判訴訟より迅速(原則3回の期日)非公開有料裁判所の許可が必要
訴訟強制的、終局的な解決手段公開有料弁護士のみ(請求額140万円以下なら認定司法書士も可)

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