産経新聞のニュースに出ていた、医労連(日本医療労働組合連合会)が発表した調査結果が衝撃的でした。
令和2年以降に妊娠した働く女性の流産率において、一般事務の17.5%に対し、看護師は27.9%、介護・福祉職は25.7%、保育士は25.2%と、医療・福祉・保育現場の流産率が突出して高いことが判明したとのことです。

背景にあるのは、慢性的な人手不足による過酷な労働や、体調不良でも休みにくい職場風土です。

一方で、少人数で現場を回している職場では、誰かが休んだり業務制限に入ったりすると「周囲のスタッフにしわ寄せがいく」のも紛れもない事実です。

これは妊婦だけの問題ではなく、育児をしながら働く従業員についても、子どもの急な発熱等で休んだり育児休業を取ることが周囲へのしわ寄せとなり、その結果、「子持ち様」といった冷ややかな言葉が使われ、従業員同士の分断が起きてしまうことがよくあります。

・妊婦・育児中の従業員 → 「申し訳ない…」と肩身の狭い思いをし、夜勤等を拒絶できずに無理をしてしまう。

・周囲の従業員: 配慮したい気持ちはあるものの、自分の負担ばかりが増えて「なぜ自分ばかり…」と不満が溜まってしまう。

本来、妊娠や出産は祝福されるべきものです。
「制度を使う本人」も「業務をフォローする周囲のスタッフ」も、双方の努力と貢献が報われる仕組みをどう作っていくべきか、他社の事例を交えて解決策を考えてみます。

 

1. 応援手当(サンクス手当)の支給で「フォローの見える化と還元」

最近導入する企業が増えて注目されているのが、「応援手当(サンクス手当)」の仕組みです。

急な休みや時短勤務、業務制限によって発生した負荷をフォローした従業員に対し、「他人の仕事をカバーした分の手当」を会社がインセンティブとして支給します。

・急な欠勤の穴埋めでシフトに入ったスタッフに「カバー手当(数千円/日)」を支給。

・育児休業に入った社員の業務を代替・シェアするチームメンバーに、育休期間中の「業務再配分手当」を毎月支給。

「お互い様」「感謝の言葉」だけで片付けるのではなく、増えた負担に対して会社がしっかり対価(賃金)で報いることで、周囲の「不公平感」や「もやもや」を大幅に軽減できます。

 

2. 国の助成金や社会保険料の免除分を「手当の原資」に活用する

「手当を払いたくても、中小企業にはそんな予算がない…」と思われる経営者も多いかもしれません。
しかし、国の制度をうまく組み合わせることで、会社の持ち出しを抑えながら原資を確保できます。

・両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース等)
中小企業が育児休業取得者や育児のための短時間勤務制度利用者の業務を代替するための体制整備を行う場合に国から助成金が支給されます。

・社会保険料の免除分の活用
産休や育休期間中は、会社負担分の社会保険料も免除されます。その浮いた人件費コストを、現場で頑張る周囲のスタッフへの「手当」や「一時金」に充てるという還元方法も非常に有効です。

 

3. 妊娠・育児期における「業務制限・免除基準」の明確化

「配慮してあげる」という抽象的な声かけだけでは、本人は気後れしてしまい、「夜勤の免除」や「重労働の拒否」を言い出せません。

・業務のチェックリスト化
妊娠が分かった段階で、「免除・軽減する具体的業務(例:抱き上げ作業、入浴介助、夜勤、長時間の立ち仕事等)」をあらかじめリストアップしルール化しておく。

・代替業務の確保
デスクワークや書類作成、調達業務など、体に負担のかからない「代替業務」をあらかじめ用意しておく。

「本人がわがままを言っている」のではなく、「会社のルールに基づいて業務調整をしている」という形にすることで、本人も周囲も納得感が生まれます。

 

4. 「お互い様」を機能させる多能工化と風土づくり

急な欠勤や業務制限で現場が混乱する最大の原因は、「その人しかできない業務(属人化)」があることです。

・マニュアル化と多能工化(クロススキル)
日常的に「誰が休んでも他の誰かがフォローできる」よう、タスクの可視化と相互サポート体制を作ります。

・「休みはお互い様」の対象を広げる
「育児」だけでなく、「介護」「自身の病気通院」「リフレッシュ」など、誰もが急な休みや予定変更を取る権利があるという風土を作ることが重要です。「子育て世代だけが優遇されている」という感覚をなくし、「自分も困ったときはお互い様」と思える環境を目指します。

 

まとめ:会社(経営陣)が「しわ寄せの責任」を背負う姿勢を見せる

この問題の本質は、「従業員同士(妊婦・子育て世代 VS 周囲のスタッフ)の対立」にしてはいけないということです。

誰かが休んだり制限を受けたりした結果、現場が疲弊するのは、「フォローする仕組みを用意していない会社側の構造問題」です。

経営陣や管理職が「フォローしてくれて本当にありがとう。増えた負担は会社がしっかり評価し、手当や給与で還元します」というメッセージを発信し、制度化することが、双方にとって良い職場づくりの第一歩となります。