先日読んだ「管理職のためのこころマネジメント」という本に面白い事例が載っていたので紹介します。

 

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部下であるTさん(25歳・男性)が、「仕事が大変で、続けていくこと自信がありません」とこぼしてきました。業務内容を考えるとそれほど大変なことをやっているわけでもなく、残業もほとんどしていません。あなたはというと、部下のミスをサポートしながら日々自分の業務に追われており、残業時間の長さも会社で1、2を争うほどです。今も、納期が今週末に迫った仕事に取り組むために、5分で昼食を済ませ、席に戻ってきたところでした。

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このような状況で、あなたはTさんに対しどう接するでしょうか…。という問いでした。

「大変なら手伝うから、そんなこと言わずにもうちょっと頑張れ」「大丈夫、君ならできるよ」と声をかけるか、「こんな忙しい時に何を言ってるんだ!」「仕事を甘く考えているじゃないのか!」「こっちはもっと忙しいんだ!」と一蹴してしまうかもしれません。自分が忙しいときに、まだまだ余裕がありそうな部下が弱音を吐いてきたら、こんな対応をしてしまうかもしれません。

では、Tさんの事情をちょっと裏側から見てみるとどうでしょう。

 

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Tさんは、会社の近くで1人暮らしをしています。電車で約50分離れた実家に住むお父さんは、先月、仕事中に脳梗塞で倒れてしまい、隣町の病院でリハビリをしています。幸い命に別状はありませんでしたが、リハビリを含めると入院は長期に及ぶ見通しです。Tさんのお母さんは近所の会計事務所で働いているのですが、お父さんが入院して以来、仕事の後に毎日病院に通っています。Tさんには4歳年上のお兄さんがいるのですが、仕事や家庭の事情で頻繁に手伝いに来られない状況です。

お母さんはもともと高血圧で薬を服用していることから、無理して倒れてしまわないかとても心配で、少しでもお母さんの手助けをしたいと思い、毎日仕事が終わると病院か実家駆け付けお母さんの手伝いをしてから帰宅するため、Tさんの寝る時間は深夜となってしまう状況です。

そんな生活が1ヶ月ほど続いていたころ、Tさんは仕事中にささいなミスをしてしまいました。先輩のサポートもあり事なきを得ましたが、自分の不注意でミスをしてしまったことがとてもショックで、帰宅してからも罪悪感や無力感を感じ、しだいに自分はこの会社にいらない存在なのではないかと思うと夜も眠れず、睡眠時間が2、3時間の日が続きました。それでも仕事が立て込んでいたため、休むわけにはいきません。上司に相談したくても、いつも忙しそうで相談できず、こんなことで上司に面倒をかけてはいけないと言い聞かせて、毎日なんとかやり過ごすといった状況です。

そんなある日、Tさんは会社で仕事していても、涙が流れてしまい、頭の中が真っ白で何も考えられなくなってしまいました。このままでは会社にも迷惑をかける、と意を決して、昼食から戻ったばかりの上司(であるあなた)に、話しかけました。

「仕事が大変で、続けていく自信がありません」

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こんな事情を知っていたら、もっと違う声のかけ方をしていたかもしれません。

ようは、日頃から部下とコミュニケーションを取っておくことが大事なんですよと言いたい記事なのですが、こういうことは意外にあると思います。

特に自分自身が忙しければ忙しいほど、自分のことしか考えられないものです。私自身がそうです。

とても良い本だったのでご紹介でした。

 

「管理職のためのこころマネジメント」 江口毅(労務行政) より抜粋

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