事務所代表 熊谷綜合労務事務所  代表 熊谷知直

熊谷綜合労務事務所 代表
特定社会保険労務士
熊谷 知直

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○労働ADRの取材記事が

北海道新聞に掲載されました

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札幌の社会保険労務士事務所 熊谷綜合労務事務所のブログ

働き方改革関連法の目的とは?

カテゴリ: 職場環境    投稿日:2018.04.08

 46日、残業時間の上限規制や高度プロフェッショナル制度の創設などを抱き合わせにした働き方改革関連8法案がついに国会に提出されました。しかし目的や趣旨の異なる8本の労働法規が1本に束ねられていることから、「別々に提出して丁寧に審議すべきだ」との批判も出ています。

 

 しかし、そもそも働き方改革とはなにか?今イチ分からない方もいるのではないでしょうか。

 

 そこで今回は働き方改革とは何か、国は何をしようとしているのかを解説したいと思います。

 

 

働き方改革とは 

 首相官邸のWEBサイトによると、働き方改革とは次のように定義付けされています。

 「働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。」

 正直、これだけ読んでもピンと来ませんが、「一億総活躍社会」というのが一つのキーワードになっているようです。「国民全員が活躍する社会」を実現したいということでしょうか。

 

 

背 景 

 このような発想が生まれた背景は、ズバリ「労働力が想定以上に減少していること」にあります。

 労働力人口すなわち仕事をしている人の人口は、1995年にピークを迎え、以降は減少の一途を辿っています。

 労働力が減るということは、国の生産力(モノやカネを生み出す力)が無くなり、すなわち国力が無くなっていくことを意味します。

 国力とは「GDP」すなわち「国の儲け」です。日本のGDPは長らくアメリカに次いで世界2位でしたが、2010年に中国に抜かれ、以後は差が開く一方です。

 これ以上国力が弱まると、国際社会での日本の立場も弱くなります。国内的にも、お金を生み出す力が弱いと消費も停滞し、税収も減りますし、国民の政治に対する不満も上がってきます。

 働き方改革とはこうした傾向に何とか歯止めをかけ、国民にもっとモノやカネを生み出してもらい、強い日本を取り戻したいという思惑から来ているものです。ずばり、働き方改革の目的とは「国力の増強」ということになります。

 

 

働き方改革の真の目的は「国力の増強」 

 この目的から見ていくと、一方で労働者のためになる「残業時間の上限規制」をすると思えば、一方で経営者サイドに立つ「高プロ」を創設するなど、「国は一体何がしたいのか」と思えるようなバラバラの法案も、一応筋が通っていることがわかってきます。

 

 

労働力不足解消の3つの方法 

 ではどうすれば労働力不足を解消し、国力を上げることが出来るのか。

 労働力不足を解消するには、次の3つの方法しかありません。

 

①人口そのものの減少を食い止める

②その人口の中で労働力人口の割合を増やす

1人あたりの生産性を上げる

 

 ①は少子化対策です。効果が出ているとは言えませんが、既に様々な策が講じられていることはご存知のとおりです。

 

 ②は、いかに働いていない人を働かせるかです。国民ははざっくり分けると「お金を生み出す側」と「お金を受け取る側」に分かれます。受け取る側の人、例えば高齢者や専業主婦、学生、障害者などをいかに労働市場に引っ張り出すかがカギになってきます。

 高齢者については、定年年齢の引き上げが既に行われ、年金の支給開始年齢も徐々に引き上がっています。60歳くらいじゃ引退させないぞという訳です。また女性の社会進出のカベとなっている税法上の配偶者控除103万が引き上げられたり、社会保険の加入基準が週20時間以上に段階的に引き下がっていたりしています。障害者に関しては企業に課される障害者の法定雇用率が引き上げられました。また、あまり言われていませんが、「成人年齢」の18歳への引き下げもこれらと同じ議論になるんじゃないかと思います。すなわち無駄に大学に行くくらいなら、早く社会人になって稼いでくれという意識改革もあるのではないでしょうか(私立大学への補助金も削減を始めており、大学が淘汰されてもいいという国の意思が感じられます)。

 

 

 ③1人当たりの生産性を上げる。よく言われていることですが、日本は国際的にみて生産性が低い方に入ります。生産性とは1人が1時間に稼ぐ価値のことで、日本は約44ドル(約4400円)です。これは先進国の中では最低レベルで、アメリカは約67ドル、日本人と国民性が似ていると言われるドイツでも約65ドルあるそうです。

 この「生産性を上げる」という目的から考えると、一見矛盾しているかに見える働き方関連法も筋が通ってきます。残業時間の上限を規制すれば、限られた時間の中で必死に働いて、同じ時間でより多くの付加価値を生み出す工夫をするようになるだろうと。また高プロや裁量労働制の拡大(先送りになりましたが)のように、時間に対しての給料でなく、成果に対しての給料という働き方が増えていけば、なるべく短い時間で大きな成果を上げるように工夫するようになるだろうということです。

 残業時間の上限規制などは、労働者側には「過労死を無くすため」と言っていますが、本当の目的は生産性を上げることにあるのではないかと思います。

 

 

働き方改革関連8法案 

6日に国会に提出された8法案の主な中身は以下のとおりです。

 

(1)労働基準法   残業時間の上限規制▽高プロ▽年休取得促進

(2)じん肺法    産業医・産業保健機能の強化

(3)雇用対策法   働き方改革の理念を定めた基本法「労働施策総合推進法」に改称

(4)労働安全衛生法 研究開発職と高プロ社員への医師の面接指導 ▽労働時間把握の義務付け

(5)労働者派遣法  同一労働同一賃金

(6)労働時間等設定 勤務間インターバルの努力義務

(7)パートタイム労働法 同一労働同一賃金。「パート有期法」に改称

(8)労働契約法   有期雇用を理由とした不合理な労働条件の禁止規定を(7)に移す

 

 

まとめ

 まとめますと、働き方改革とは「人口の減少などから来る日本の労働力低下に歯止めをかけ、国力を上げるために、労働市場の外にいる人を労働市場の中に引っ張り込んだり、1人当たりの生産性を上げる様々な施策のこと」と言えるでしょう。

 

 

 

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