政府の規制改革推進会議が、労働基準監督業務の一部を社会保険労務士などの民間事業者に委託する検討を進めるという、驚きのニュースが報じられました。

 委託対象業務の範囲や民間事業者の権限などを詰め、6月に安倍晋三首相に提出する答申に盛り込むとのことです。

 労働基準監督署は慢性的な人手不足に陥っており、違法な長時間労働の是正など企業に対する監督が困難になっていることは以前より指摘されていました。

 

 だからといって社労士が? 社労士である私が言うのもなんですが「大丈夫か?」というのが第一印象でした。というのも、昨年話題になった「うつ病ブログ」の社労士のように、過度に企業側に偏っている社労士が実際に存在しているのも事実だからです。

 

 社労士に委託するとなると、委託する「権限」と「内容」が問題になります。労働基準監督官は「司法警察官」と呼ばれ、普通の警察と同じように強制捜査や逮捕、送検をする権限を持っています。民間人である社労士にこうした権限を渡すことは法技術上出来ないはずなので、「確認」「注意」「監督官(警察)への報告」といった内容に留まるのではないかと思われます。

 

 イメージとしては、報道の中にも例として出てきた「駐車監視員」のような感じでしょうか? 彼らは駐車違反の「取締り」は出来ず、出来ることは放置車両の確認及び確認標章の取付け、警察への報告に留まります。違反者に対しての交通反則切符の作成・交付等は警察が行います。

 

 たとえこの程度の制限された権限であっても、今のように違法な会社の野放しが続くことに比べれば、企業を巡回する「みなし公務員」が増えることはプレッシャーになるので、効果はあるかなと思います。

 

 しかし先にも言ったように、過度に企業に偏り過ぎる社労士を選定してしまうと、「報告を上げない」「揉み消す」といったことも心配されます。社労士の「選定」が一つポイントになるのかもしれません。このニュースに対するネット上の声を見ても、残念ながら社労士への不信感から反対する声が多いです。社労士はこうしたイメージを持たれていることを認識し、襟を正して日頃から業務を行わなければならないと、私も改めて自覚をしたいと思います。


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